ワンポイント
2022.09.01
発育性股関節形成不全(DDH)とは狭義には周産期(妊娠22週)~出生後の発育過程で大腿骨頭が関節包の中で脱臼している状態をいいます。しかし、広義では出生前後の脱臼だけではなく亜脱臼や将来脱臼をきたす可能性を有する寛骨臼形成不全を含めた脱臼準備状態にある股関節すべてが含まれます。
【要因】
遺伝的要因があり先天性股関節脱臼例の37%に家族歴があります。男児よりも女児の方が5~7倍多く、骨盤位(逆子のこと)での出産や出生後の股関節及び膝関節伸展位保持がその発生に関与しています。寒い地域や時期に生まれると脚を伸ばした状態で衣類で包んでしまうため多くなります。
【徴候】
その他:片側脱臼している患児の顔は脱臼側と反対の方向を向いていることが多い。
幼児期になっても脱臼が残っている場合は歩行の習得が遅れたり異常歩行や腰椎前弯増強の原因になったりします。
【診断】
主に単純X線像(レントゲン)で診断します。
Shenton(シェントン)線(右図の③)
閉鎖孔の上縁をなす曲線を外側に延長すると、
正常では大腿骨頸部内縁に一致しますが脱臼ではこの線が乱れます。
Calve(カルベ)線(右図の④)
正常では腸骨外縁のなす曲線と大腿骨頸部外縁のなす曲線が一致しますが脱臼ではこの線が乱れます。
【治療】
・生後4週未満の新生児期では下肢の自由な運動を妨げず開排位をとりやすい衣服を着用し抱き方など注意しながら経過観察します。
・1才未満の乳児期ではPavlik(パブリック)法を行い、整復されない場合は頭上方向牽引を行います。
・小学生になるまでの幼児期では牽引や徒手整復など保存療法で様子をみます。歩行動作獲得後日時が経ったものは観血的整復(手術)に移行することが多いです。
詳しくはスタッフまでお気軽にお尋ねください。
担当:西村・弘田