ワンポイント
2022.07.25
当院では、膝や股関節の関節疾患として、変形性関節症の方が多く来院されますが、今回は、変形性関節症以外の関節疾患について勉強しました。代表的なものとして、痛風と偽痛風をご紹介します。
1.痛風
概念:痛風は、尿酸の生成や排泄異常による高尿酸血症の結果、尿酸-1-ナトリウム結晶が体液中で増えすぎることによって、飽和し、分離して固体化することにより、沈着し急性関節炎発作、痛風結節、尿路結石、腎障害など多臓器に多彩な症状がでる疾患です。
メタボとも関りが強く、高血圧、脂質異常、肥満などと合併することが多く遺伝因子も関与し、家系内の痛風患者を有する場合が多いです。
30から50歳代の男性に好発し、閉経前の女性では稀です。
発生機序:血中の尿酸はプリン体の最終産物で、主に肝臓で作られる。
細胞崩壊や体内で再合成されたプリン体に由来するものがほとんどで、2割程度が食物に由来します。
プリン体とは
穀物、肉、魚、野菜など食物全般に含まれる成分で、主にうま味の成分にあたります。人の体内でも生成、分解されます。通常は分解されて尿酸に変化し体外に排出されます。尿酸は体液中で溶けにくい物質であり、増えすぎて飽和状態になると、関節内や他の組織に結晶として、固体化しやすくなります。
固体化された尿酸塩により、痛風発作が引き起こされます。
症状① 急性痛風性関節炎
前述の固形化された尿酸塩がくるぶしやアキレス腱、膝関節など下肢に起こりやすく、特に足の親指の関節に初発することが多いです。(約70%)発作は24時間以内にピークに達し7から10日で軽快します。次の発作まで、数か月から数年かかることもありますが、高尿酸血症を放置すると次第に発作の頻度が増加し、再発を繰り返し、慢性関節炎に移行します。
症状② 痛風結節
高尿酸血症を放置すると手指や足の指の皮下、耳介に尿酸塩の沈着を主体にした肉芽組織が形成される。低体温部に発生しやすい。
症状③ 腎障害、心血管障害
高尿酸血症は慢性腎臓病の発症、進展と密接な関連がある。
診断:特徴的な急性の単関節炎と、以前からの高尿酸血症の存在を確認する。関節液中の尿酸結晶の同定も重要
痛風発作の治療:比較的多量の非ステロイド性抗炎症剤を短期間に限り用いる。
高尿酸血症の治療:生活習慣指導と薬物治療を行う。過食、常習飲酒、運動不足などの生活習慣をただす指導が必要です。
2.偽痛風
概念:ピロリン酸カルシウム二水化物が原因となり、痛風に類似した急性関節炎を起こす病態。膝に最も多く、手関節の線維軟骨、椎間板線維輪にも多い。
症状:高齢者に多く、発熱を伴う急性の関節炎がおこる。数日から2週間で軽快する。
診断:関節液中や病変部のピロリン酸カルシウム結晶を証明する。
治療:偽痛風の関節炎の対症療法を行う。
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担当:平岩 森岡