ワンポイント
2021.08.18
関節リウマチとは、関節内に存在する滑膜という組織が異常増殖することによって関節内に炎症を生じる疾患で、進行すると関節が破壊されるのに加え、傍関節性・全身性骨粗鬆症を引き起こします。
傍関節性骨粗鬆症とは・・・炎症があり腫れて痛い関節の近くの骨(痛い関節の傍らの骨)に起きる局所的な骨粗鬆症です。
以前まで「関節リウマチは徐々に進行する慢性疾患である」と考えられていた為、効果の弱い薬物からスタートし徐々に強い薬物を使うという治療戦略が中心的でした。しかし医療の進歩により「関節リウマチによる関節破壊は発症早期に進行する」ことが判明し、以前までの治療戦略が失敗であったことが裏付けられました。
近年は、発症早期に進行する関節破壊を抑制することが可能なメトトレキサート(MTX)や生物学的製剤が開発され、発症早期から強力な治療薬を用い、早期の寛解を目指すtreat-to-target(T2T)がリウマチ治療のスタンダードとなっています。
寛解とは・・・症状が落ち着いて安定した状態。症状が一時的に軽くなったり、消えたりした状態のことで、このまま再発せずに完全に治る可能性もあるが、場合によっては再発する可能性もまだある状態のこと。
リウマチ患者の発症年齢は年々高齢化しており、男女差も小さくなっています。
高齢者は薬物の忍容性が低い為に抗リウマチ薬による有害事象発生率が高く、薬物療法が制限され、疾患活動性コントロールが難しくなります。加齢も伴って、運動機能が低下しADL(日常生活動作)・QOL(生活の質)も低下してしまう問題があります。
薬物の忍容性とは・・・薬物によって生じることが明白な副作用がどれだけ耐え得るかの程度を示したもの。薬物の服用によって耐えられない程の副作用が発生する場合は「忍容性が低い」となる。高齢者では忍容性が低いが為に薬物の量を減らしたり、強い薬物を使用できなかったりします。
上記でも述べたように関節リウマチでは骨粗鬆症を引き起こします。これは炎症による関節周囲の骨吸収の促進及び骨形成の抑制、ステロイドの使用、疼痛による運動負荷の減少が原因であると考えられています。そのため近年の治療戦略では生物学的製剤による炎症の抑制に加え骨粗鬆症(骨の脆弱性)に対しての介入が必要とされています。
関節リウマチの滑膜炎によりRANKLEというものが産生されます。このRANKLEは破骨細胞を誘導・形成し骨吸収を促進することで骨粗鬆症を進行させます。その為このRANKLEの産生を阻害すれば骨吸収をも阻害し骨粗鬆症の進行を抑制できると考えられています。そこでRANKLEに対する薬物としてデノスマブ(プラリア)が有効であると考えられています。
詳しくはお近くのスタッフにお尋ねください。
担当:西村・能勢