ワンポイント
2020.12.02
R02.11.25「大腿骨の骨折」について院内勉強会をしました。
大腿骨の骨折は近位部骨折、骨幹部骨折、顆上・顆部骨折に分けられる。
その中から今回は大腿骨近位部骨折についてまとめてみました。
≪大腿骨近位部骨折≫
発生部位により、
に分類される。
①骨頭骨折、④転子下骨折は
交通事故などの高エネルギー外傷で生じ、
②頚部骨折、③転子部骨折は
主に高齢者の転倒などによる低エネルギー外傷で生じる。
②頚部骨折、③転子部骨折は
高齢化に伴って、日本では今でも増加している。
~骨粗鬆症と大腿骨近位部骨折との関連性~
欧米ではビスフォスフォネートの登場した1995年以降、男女ともに大腿骨近位部骨折の発生率が減少している。しかし、日本では欧米と比べて骨粗鬆症治療の普及が進んでおらず、今でも増加している。
ビスフォスフォネート:
破骨細胞(骨を壊す細胞)の働きを抑えることで骨吸収(骨を壊す過程)を抑え、骨密度の低下を防ぐ作用のある薬。
当院で使用している薬の例・・・ベネット、ボナロン、ボノテオ、ボンビバなど
~骨癒合について~
頚部骨折により大腿骨頭の栄養血管である内側大腿回旋動脈の分枝が損傷されると、骨頭の血行障害をきたす
関節内で生じる①骨頭骨折、②頚部骨折は血行動態の特異性などによって骨癒合しにくく、偽関節(骨折が癒合していない状態)や骨頭壊死になりやすい。
関節外で生じる③転子部骨折、④転子下骨折は血行の点では骨癒合に有利だが、付着する筋や靭帯によって転位しやすく、関節内骨折に比べ出血量が多いため高齢者では注意が必要。
①大腿骨頭骨折
通常、股関節後方脱臼に伴い発生する。整復が困難であり、骨頭壊死をきたし二次性変形性股関節症に移行しやすい。
②大腿骨頚部骨折
骨粗鬆症を有する高齢者の転倒で生じることが多い。関節内での骨折であり、骨膜(骨表面を覆い、豊富な血管・神経を含んでいる膜性の組織)が乏しいため骨癒合しにくい。また、頚部骨折により骨頭への血流を遮断するため、骨頭の血行障害、骨頭壊死を起こす。
③大腿骨転子部骨折
骨粗鬆症を有する高齢者の転倒で生じることが多い。関節外での骨折であるため軟部組織や髄内からの血行が期待でき、骨癒合には有利である。しかし、血流が豊富なため大量に出血しやすい。また付着する筋や靭帯の牽引力により転位しやすく、偽関節や変形治癒となることがある。
④大腿骨転子下骨折
主に若年者の交通事故などによる高エネルギー外傷で生じる。転子部骨折よりもはるかに整復が困難で疼痛も強い。
質問・疑問等あればいつでもお問い合わせください。 担当 藤原・藤本